訃報

また一つ悲しいニュースがありました。競馬の藤岡康太騎手(35)が亡くなりました。6日(土)のレース中の落馬によって頭部と胸部を負傷し、意識不明の状態で懸命な治療が行われましたが、残念ながら帰らぬ人となりました。競馬界では今年3月にも高知競馬で落馬死亡事故があり、若い命が奪われました。もちろん最善を尽くして安全配慮をしていますが、常に死と隣り合わせの仕事である事を再認識させられました。

藤岡康太騎手はその人柄から多くの競馬関係者に愛されていた為、競馬サークルは大きな悲しみに包まれています。昨年はキャリアハイの成績を収め、今年はそれをさらに上回るペースで勝ち星を積み重ねており、まさにこれからジョッキーとしてピーク迎えようとしていた矢先の出来事でした。

競馬に限らず、競艇・競輪・オートレースと公営ギャンブルに認められている競技には全て大ケガや死亡のリスクが付いてまわります。安全第一ではありますが、彼らはアスリートであり勝負の世界に生きる勝負師でもあります。そしてファン(投票してくれた人)や関係者(馬主など)の期待を背負っている以上、危険がある事が分かっていても踏み込んで行く事で勝利を目指します。身に付けるヘルメットやプロテクターなどの防具は進化していますが、やはり予期せぬ事で落馬・落車は起こってしまいます。無防備に放り出される事がほとんどで受け身が取れない、頭から落ちる、後続に巻き込まれる事で身体に想像以上のダメージを負う事があります。

特に競馬に於いては操っているのが馬(意思を持った生物)である為、自身の能力(技術)だけで制御仕切れるものではありません。もちろんプロである以上、さまざまな技術と準備、予測を持って騎乗していますが、馬は臆病で繊細な生き物である為、些細な音や動きに敏感に反応します。客の歓声はもちろん他馬やジョッキーの動きにも気を取られる為、ジョッキーは鞍上で無駄な動きを省き軸がブレない(動かない)事を心掛けます。それでも芝に足を取られたり、前の馬の脚に引っ掛かったりで急にバランスを崩す事が多々あり、技術だけで踏ん張る事は不可能です。

競馬界には「無事これ名馬」と言う言葉がありますが、騎手にも同じ事が言えると思います。勝負の世界である以上、勝つ事は正義(正解)だと思いますが、ひとつのミスもしくはミスが無くても偶然の重なりで命を落としてしまう事がある世界です。近年、落馬事故により亡くなったジョッキーは若い方が非常に多く、35歳未満が大半で20代が最も多いです。もちらん死亡事故の数倍、落馬による負傷は発生しています。中には偶然助かった人もいれば復帰出来ずに引退したジョッキーも多いです。人馬共に無事に帰って来る事が出来て初めてレースが完了したと言えると思います。

事故が無くなる事は無いでしょうが、少しで痛ましい事故が減る(出来れば起こらない)事を願いたいと思います。

藤岡康太ジョッキーのご冥福をお祈りいたします。

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