3月に日銀がマイナス金利政策を解除して17年ぶりの利上げに踏み切った事を受け、メガバンクはすぐに普通預金や定期預金の金利引き上げを発表しました。倍率にすると大きいですが、もともと限りなくゼロに近い金利だったのでそこまで大きな変動ではありませんでした。それよりも多くの人が関心を寄せていたのは変動金利で借りている住宅ローン金利の動向でした。メガバンク3行が住宅ローンに影響がある短期プライムレートの利上げに踏み込まなかった事でその他(地銀など)も変更はなく一旦は据え置かれていましたがマイナス金利解除から約1ヶ月、ついにその壁が崩れました。
住信SBIネット銀行
楽天銀行と並ぶネット銀行大手で預金残高こそ楽天にトップを譲りますが貸出金では楽天を大きく引き離してトップを独走、地銀に混ざってもトップ10に入る規模です。SBI証券、三井住友カードと連携しSBI経済圏の一角をなすこの銀行は使い勝手の良さや手数料の安さと併せて住宅ローン金利が低い事でも有名です。
短期プライムレート(短プラ)
そんな住信SBIネット銀行が17日、短期プライムレート(短プラ)を0.1%引き上げて年1.775%にし、5月1日から適用すると発表しました。これにより同行で借りた住宅ローン金利が上がる可能性が高くなりました。住宅ローンの基準金利は年2回(4月・10月)見直される事が一般的な為、次回の見直し時期の10月までに短プラが下がらなければ変動金利が上昇し25年1月の返済分から影響が出る事になります。冒頭でも書きましたが、メガバンクが踏み込まなかったところに先に踏み込んだ事には大きな意味があります。
生活への影響
ではどの程度の影響があるのか?
例)借入金:4,000万円 借入期間:35年 ボーナス返済:なし 金利:0.325%
上記の条件から金利が0.1%上がると総額で約75万円、月々にすると2,000円弱の増額になります。総額で見るとそれなりの額ですが、月々に換算すると今すぐに生活が苦しくなるレベルではありませんが、このまま上昇を繰り返し1%まで上がると月間で2万円弱(10倍)の増加になります。ここまで上がると生活への影響はかなり大きくなります。ローンが払えず家を手放す人が増える事も予想されます。
業績への影響
住信SBIネット銀行の昨年末時点での住宅ローンの貸出残高は6兆円を超え、そのうち93%が変動金利となっています。単純計算で金利が0.1%上がると受取利息が年間で50億円以上増える事になります。1%なら500億増でこれは同行の23年3月末の純利益の倍以上の金額になります。もちろん預金に対して支払う利息も上がるのでそのまま利益にはなりませんが、業績が良くなる事は明白です。貸出残高が桁違いのメガバンクではさらにとてつもない利益になります。
経済への影響
なぜ住信SBIネット銀行が短プラを0.1%上げた事にここまで反応しているのかですが、同行の貸出総額はメガバンクの1/10以下ですが住宅ローンに限れば23年3月期の実行額は1兆4,000億超でメガバンクを超えて業界トップです。
どの業界であってもトップもしくはトップグループの動向によって大まかな流れが決まってしまう事がほとんどです。つまり今回の住信SBIの短プラ引き上げは全ての銀行に波及する可能性が極めて高い、引いては変動金利の住宅ローンを借りている全ての人に影響が出る可能性が高いと言えます。
では金利がどこまで上がるのかですが、米国の様に5%とかはさすがに非現実的ですが1~2%は十分にあり得ると思います。一度上げれば再びゼロ金利にする事はコロナな様な世界的な問題が起きない限り(ゼロまで)下げる可能性は低いでしょう。仮に1%であってもスタートがゼロなので1%の利上げになり生活苦を引き起こします。
まとめ
支払う金利が上がれば貰える金利も上がり多少は相殺されますが、住宅ローンの借入残高以上の預金残高を保有している人は少ないでしょう。多少なりとも預金があるのなら繰上返済が一番の選択肢になると思います。預金を投資に回して金利以上の利益を考える人がいるかもしれませんがおススメしません。理由は簡単で金利が上がると企業は返済がしんどくなり新規借入も躊躇する為、業績と株価が上がりにくくなります。その状況で株式投資で利益を上げるのは素人に難しい(ほぼ無理)です。※銀行系は業績が良くなるのでメガバンクに投資をして配当と株価上昇を集中的に狙うなら可能性は多少あるかも。
個人的には節約と繰上返済でダメージを最小限に抑えて株価が回復するまでじっと待つ方が良いと思います。株(投資信託)を売らず持ち続けられるかが勝負の分かれ目になるでしょう。
金利上昇による生活への影響をきちんと把握しましょう。繰上返済は自己責任で。
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